みんなが大好きな食べ物といえば、そう、カレーですよね!日本のカレーももちろんおいしいけれど、インドやタイをはじめとした世界各国のカレーも人気を集めています。世界にはどんなカレーがあるのか、どのような特徴があるのか気になりませんか?
前編に引き続き、今回は「世界カレートリップ(後編)」と題して、本場インドのカレーから、イギリス・ドイツといったヨーロッパ諸国の変わったカレーを紹介します。
世界のカレー:インド
インドはカレー発祥の地。インドの伝統医学「アーユルヴェーダ」では、スパイスの効能を活かし「病気は台所で治す(医食同源)」という理念があります。カレーをはじめとしたスパイスをふんだんに使うインド料理は、このアーユルヴェーダの下で形成されていきました。
インドのカレーは宗教や気候・採れる作物などさまざまな理由から、北インドと南インドで大きな違いがあります。
首都ニューデリーのある北インドでは、小麦粉から作るナンやチャパティを主食にしてきました(ただし現地ではナンは高級品のため、チャパティが一般的)。そのため北インドのカレーはこういったパンによく絡むよう、とろみが強く、コクのある濃厚な味わいが特徴です。日本で見かけるインドカレーはほとんどがこの北インドのカレーです。
対して南インドでは米が主食なので、タイカレーのようにサラサラとしたカレーが多く食べられています。辛味だけではなく酸味を加えるという特徴があります。
カレーの具にも宗教が色濃く現れています。ヒンドゥー教では牛肉、イスラム教では豚肉を禁忌としています。仏教やキリスト教では肉の禁忌はないものの牛肉や豚肉が手に入りにくいため、インドでは鶏肉や羊肉を使ったカレーが多く見られます。インドには菜食主義者も多く、好んで肉食をする人は少ない傾向にあります。
南アジアや西アジアでは、スプーンは使わず右手で食事をする文化が息づいています。これは左手が不浄と考えられているほか、食べ物は神が与えてくださった神聖なものなので、道具を使うのは失礼だとする考えがあるためです。
インドを代表する主なカレーの種類
インドを代表するカレーには以下のようなものがあります。
【北部】
- ムルグマッカーニ:バターチキンカレー
- マトンドピアザ:羊肉と玉ねぎのカレー
- チキンコルマ:ヨーグルトとナッツのチキンカレー
- キーママター:キーマカレー
- パラクパニール:ほうれん草とチーズのカレー
- アルパラク:ほうれん草とじゃがいものベジタリアンカレー
- ダール:豆のベジタリアンカレー
【南部】
- サンバル:さまざまな野菜を煮込んだ豆ベースのカレー
- ラッサム:トマトとレンズマメを使った辛いカレー
「南部のカレーは聞いたことがない」という人も多いのではないでしょうか。こうして見ると、やはり普段お店で食べる機会があるのは圧倒的に北インドカレーのようです。
世界のカレー:スリランカ
スリランカはインドのすぐ南下に位置する小さな島国。仏教国であり、米を主食とする点など、日本との共通点が多い国です。極めつけは「モルディブフィッシュ」という魚からとれるダシを料理に用いること。日本でいうかつお節ですね。辛さをのぞけば、日本人の舌によく合う料理が多いです。
そんなスリランカのカレーは、ココナッツミルクをベースにするため、スープ状でサラサラしています。具材には野菜や魚介類などを使うのが特徴です。1種類の具材だけを使い、素材の味わいを活かしたカレーに仕上げるのが基本です。
スリランカカレーの味の決め手となるのが「トゥナパハ」と呼ばれるミックススパイス。スパイスの配合は家庭やメーカーによって多少異なるものの、コリアンダーやクミン・シナモン・クローブといったお馴染みのスパイスに、マスタードシードやフェンネル・カレーリーフなどのハーブをブレンドして作ります。これらをすり潰しパウダー状にすれば、オリジナルの「トゥナパハ」の完成です。
スリランカを代表する主なカレー
スリランカを代表するカレーには以下のようなものがあります。
- パリップ:レンズ豆のカレー
- ワアンバトゥモージュ:揚げナスのカレー
スリランカではお皿の真ん中にお米、その周りに数種類のおかずを盛り、中央にカレーをかけて食べるのが一般的です。指を使い、それぞれのおかずを混ぜながらいただきます。
世界のカレー:パキスタン
パキスタンはインド北部と接する地理的特徴から、パキスタンのカレーもまた、北インドカレーと共通する部分が多いです。料理には肉が多用されますが、イスラム教の影響により豚肉は使いません。鶏肉や羊肉・牛肉が主流です。特に羊肉の臭みを消すために、クミンやコリアンダーといったスパイスを使ったものが多いです。そんなパキスタンのカレーには以下のような特徴があります。
- 辛さ控えめ
- 油を多用する
- トマトベースでさわやか
- 水分が少なく、汁物というよりはほぼ固形
パキスタンでは「辛すぎは健康に悪影響」という医者の知見が広まっているようで、意外にも辛さ控えめのカレーが多いです。スパイスは多く使われるものの、辛味成分であるカイエンペッパーや胡椒などは控えめです。
パキスタンカレーはトマトと油をたくさん使い、じっくり煮込んで水分を飛ばします。完成するころにはトマトのコクが凝縮して、深みのある味わいのカレーになります。
北インドに近いこともあり、ライスではなくチャパティなどのパンにカレーをつけていただきます。
パキスタンを代表する主なカレー
パキスタンを代表するカレーには以下のようなものがあります。
- ムルギ・カリー:チキンカレー
- コフタ・カリー:マトンミートボールのカレー
- マチリ・カリー:たらのカレー
- アロ・ムッタア・アンダ・カリー:じゃがいも・グリンピース・たまごのカレー
- カラヒ・ゴシュト・カリー:汁気のないマトンカレー
渋谷にこのパキスタンカレーを食べられる「ムルギー」という老舗カレー屋さんがあります。本場の味を日本人のテイストに合うようにアレンジしているので、気になる方は足を運んでみるのもよいでしょう。
世界のカレー:ネパール
パキスタン同様、ネパールも北インドと隣接する国土柄、北インドに似た特徴をもつ料理が多いです。しかしまったく同じというわけではなく、モモ(蒸し餃子)に代表されるように、チベット料理や中華料理の要素がミックスされた料理と言えるでしょう。
そんなネパールのカレーは全般的に、インドなどに比べてスパイスは控えめ。豆を使うことが多いです。油の量も少ないので、あっさりした味わいが特徴的です。毎日でも食べられるくらいのあっさりさが、日本人もきっと気に入ることでしょう。
インド同様、現地の人がナンを食べることはほとんどなく、チャパティもしくはライスが一般的です。ライスを合わせる点も北インドとは異なりますね。
ネパールを代表する主なカレー
ネパールを代表するカレーには以下のようなものがあります。
- ダルバート:豆カレー
- アル・べンタ・タルカリ:じゃがいもとナスのドライカレー
- ククラレピャジタレコ:チキンカレー
- ラムブトゥワ:ヒマラヤ地方のラム肉のカレー
基本的にはダルバートがメインとなります。スリランカのように、カレーを含めた複数のおかずが盛られて提供されることが多いです。まずは単品で、最後は複数のおかずを混ぜて、などいろいろな楽しみ方ができるでしょう。
世界のカレー:イギリス
ヨーロッパの中で唯一、カレーが国民食となっているのがイギリスです。若者を中心にカレーを日常的に食べているそうです。
イギリスはインドを植民地としていた歴史的背景から、18世紀にカレーがインドからイギリスへと伝わりました。
イギリス人は刺激の強いものを好まないため、スパイスの使用は控えめです。また、小麦粉でとろみをつけたり、ヒンドゥー教徒にとっては禁忌である牛肉を使ったりと、イギリスのカレーはインドのものとは似ても似つかないものです。
19世紀になるとイギリスでカレー粉が作られました。明治時代になるとイギリスのカレー文化やカレー粉が日本にも伝来し、日本のカレーの礎となりました。
イギリスを代表する主なカレー
イギリスを代表するカレーには以下のようなものがあります。
- チキンティッカマサラ:イギリス風タンドリーチキンカレー
- バルチ:イギリス風パキスタンカレー
チキンティッカマサラは、イギリスのインド料理店が発祥のカレーと言われています。タンドリーチキンとさまざまなスパイス、トマトを煮込んだクリーミーなカレーです。
バルチはイギリスのバーミンガム地方を代表する、パキスタン由来のカレーです(バルチは「バケツ」の意)。取っ手のある中華鍋風の鉄鍋で提供されるのが特徴です。
世界のカレー:ドイツ
ヨーロッパではイギリスを除くとカレーはまだまだマイナーな料理です。しかしここドイツにも、カレーこそないものの、人々が愛してやまないカレー料理があります。
それがベルリン名物の「カリーヴルスト(カレーソーセージ)」。ドイツ名物のソーセージにケチャップと、カレー粉をトッピングしたファストフードです。ドイツでは至る所にカリーヴルストの屋台があり、毎日のおやつとして、スポーツイベント時のお供として、国民に愛されています。
まとめ
気になるカレーはありましたか?イギリスのカレーが日本のカレーの原型となったのには驚きでした。
隣接するアジア諸国でも、味や辛さの特徴に違いがあるのはおもしろいですよね。
カレーをキーワードに各国の料理を紐解いてみるといろいろな発見がありそうです!
最近はインドやタイカレー以外の専門店も続々と増えてきています。ぜひ、前編と後編でご紹介した国々のカレーから、お気に入りを見つけに出かけてみてください。
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