毎年、春の訪れとともに私たちの心を高揚させてくれる桜。
日本のお花見は世界的にも有名になり、美しい桜を一目見ようと、世界中から観光客が訪れるほどになりました。
日本でもっともポピュラーな桜といえば染井吉野(ソメイヨシノ)ですが、桜の種類は非常に多く日本だけでなんと500~600種類にものぼると言われています。
そこで今回は、桜の品種とその特徴について紹介します。
みなさんも目にしたことのあるポピュラーな桜から、見かけたらラッキーなレアな桜まで紹介!
今年はお花見をしながら、桜うんちくを披露してみてはいかがでしょうか?
桜の基本情報
桜といえば日本の花のイメージが強いですが、実は北半球の温帯地域に広く分布しています。
そのため海外でも桜は見られますが、日本の桜は特に美しいことで有名です。
桜は品種によって「バラ科」と「サクラ亜科」の2科に分かれる植物です。
桜は自然勾配がよく起こる植物のため、桜の品種は大きく以下の3つに分かれます。
- 野生種
- 自然交雑で定着した栽培種
- 人為的な交雑による栽培種
桜の野生種は、次項で紹介するたった11種類しかありません。この野生種を元に、自然交雑により生まれた品種や、人為的にかけ合わせて生み出した品種があります。
日本に自生する桜の野生種は11種類
以下に、日本にもともと自生していた野生の品種を11種類紹介します。
大島桜(オオシマザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】白色
【開花時期】4月上旬
花と葉に強い香りをもつのが特徴で、桜餅に使われる桜の葉としても有名な大島桜。
名前にもなっている「大島」とは伊豆大島に由来し、伊豆諸島を中心に分布していた野生種です。現在は全国に広く生育し、伊豆諸島では3月中旬頃から開花し始めます。
山桜(ヤマザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】白色~淡いピンク色
【開花時期】3月下旬~4月上旬
山桜は山に自生する桜の総称で、和歌にも詠まれるなど日本固有種のひとつとして古くから親しまれてきた品種です。染井吉野が栽培される前は、桜といえば山桜を指すほどメジャーな品種でした。花と同時に葉が出るのが特徴で、葉の色も赤色・赤紫色・褐色などさまざまに変化します。
大山桜(オオヤマザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】ピンク色
【開花時期】3月下旬~4月上旬
大山桜は山桜より花や葉が大きい品種で、花は直径3~5cmにもなります。濃いピンク色の花を咲かせることからも、淡い花の色をもつ山桜とは区別されています。
北海道の山地でよく見られることから、別名「蝦夷山桜(エゾヤマザクラ)」とも呼ばれており、寒さに強いのが特徴です。
霞桜(カスミザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】淡いピンク色
【開花時期】4月下旬~5月上旬
山桜と間違われやすい品種が霞桜です。葉には毛が生えることから、別名「毛山桜(ケヤマザクラ)」とも呼ばれます。
山桜と酷似していますが、最大の違いは霞桜の方が北寄りに自生していること。朝鮮半島にも分布しています。
霞桜は開花時期が遅く、5月頃まで楽しめる桜です。
熊野桜(クマノザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】淡いピンク色
【開花時期】3月~4月上旬
熊野桜は三重県南部から和歌山県南部の山奥に分布する桜です。早咲きの山桜として扱われていましたが2018年に新種と判断され、熊野桜と銘打たれました。
3〜4月に見頃を迎えると、熊野地方では熊野桜の開花を喜ぶ催しが開かれます。
樹高は8mほどと低めですが、満開を迎えると染井吉野に引けを取らないほどの美しさが感じられます。
江戸彼岸桜(エドヒガンザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】淡いピンク色(白色の異変種も見られる)
【開花時期】3月中旬(3月20日前後)
春の彼岸の時期に開花することから名付けられた、江戸彼岸桜。花が咲いた後に葉が開くのが特徴です。
桜の中では病気に強く圧倒的に寿命が長いため、大木になる品種です。各地で天然記念物に指定されていることも多く、樹齢1000年を超える名木もあります。
豆桜(マメザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】白色~淡いピンク色
【開花時期】4月上旬~5月初旬
豆桜という名は、花の直径が桜の品種の中でも小ぶりであることから付けられました。下向きに、かわいらしい小さな花を咲かせます。
関東周辺、特に富士山周辺に多く自生しているため「富士桜(フジザクラ)」や「箱根桜(ハコネザクラ)」とも呼ばれます。
挿し木でも増やせるため、家庭でも育てられる桜です。
高嶺桜(タカネザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】白色~淡いピンク色
【開花時期】5月上旬~7月上旬
高嶺桜は寒い場所を好み、標高の高い部分にのみ自生する桜です。開花時期は早くても5月から、見頃は初夏にかけてと遅めです。
別名「峰桜(ミネザクラ)」とも呼ばれています。
豆桜と酷似しますが、高嶺桜の樹高は5~10mほどで豆桜よりは高め。花の中央に向かってピンクの色味が増していくのが特徴の、美しい桜です。
深山桜(ミヤマザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】白色
【開花時期】4月下旬
深山桜はその名のとおり山深い場所で見られ、比較的遅くに開花する桜です。日本以外にも、朝鮮半島や中国・サハリンといった地域でも分布しており、高山や寒冷地で生育します。
樹高も低めで花の色も白いため、一見桜だと判断しにくいですが、可憐な花は風情があります。
丁字桜(チョウジザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】白色~淡い紫色
【開花時期】3月中旬~4月初旬
丁字桜は本州の太平洋側と、熊本県の一部にも分布する桜です。原産は中国と言われています。
がく筒(花びらの付け根のふくらんだ部分)は太くて長めで、花は下向きに垂れ下がるように咲くという個性的な形をしています。横から見ると丁の字に見えることから、その名が付けられました。
寒緋桜(カンヒザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】濃いピンク色
【開花時期】3月中旬
寒緋桜は沖縄県で桜の開花の観測に使われる桜で、沖縄県では1月中旬頃に開花します。中国や台湾が原産と言われています。
緋桜という名前からも伺えるとおり、緋色(黄色みがかった鮮やかな赤色)が美しく、ベルのような形をした花が特徴的な品種です。
寒緋桜はその散り方も特徴的。花びらが散るのではなく、花首からぽとりと落ちるように散るおもしろい桜です。
日本各地でよく見かける桜
次に、日本各地で見かける有名な桜の品種を6種類紹介します。
染井吉野(ソメイヨシノ)
【花形】一重咲き
【花の色】淡いピンク色
【開花時期】3月下旬~4月上旬
【交配】大島桜×江戸彼岸桜
日本の桜の約8割を占めるのが染井吉野。その名を知らない人はおそらくいないでしょう。気象庁が桜の開花を宣言する際に指標とするのもこの染井吉野です。
江戸時代末期~明治初期頃に現在の東京都豊島区にあたる染井村で育てられた桜が、当時桜の名所であった奈良県の吉野山にちなんで名付けられたとされています。
八重桜(ヤエザクラ)
【花形】八重咲き
【花の色】品種により異なる
【開花時期】品種により異なる
「八重桜」は品種名ではなく、八重咲きの桜の総称です。ボリューム感のある花は豪華で魅力的なので、地植えや盆栽などでも人気です。
八重桜は全国でさまざまな品種が栽培されています。一例として、関山(カンザン)・楊貴妃(ヨウキヒ)・松月(ショウゲツ)・手毬(テマリ)・一葉(イチヨウ)・普賢象(フゲンゾウ)などが有名です。
河津桜(カワヅザクラ)
【花形】八重咲き
【花の色】濃いピンク色
【開花時期】1月下旬~3月上旬
【交配】寒緋桜×大島桜
河津桜は静岡県の河津町で発見されたことからその名が付いた、早咲きの八重桜です。
例年1月下旬頃から開花し、3月上旬まで長く楽しめます。海沿いの地方で生育していたことから、風や雨にも強い特徴があります。
枝垂桜(シダレザクラ)
【花形】品種により異なる
【花の色】品種により異なる
【開花時期】品種により異なる
枝垂桜は枝が垂れる桜の総称です。枝が細く、花の重みで下に垂れ下がっていく桜です。その美しさが京都の風景にも見事に調和することから、京都の府花に指定されています。
花びらの色は白から淡いピンク・濃いピンクまでさまざま。咲き方も一重咲きから八重咲きまで、品種によって異なります。
冬桜(フユザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】白色~淡いピンク色
【開花時期】10月~12月/4月上旬
【交配】山桜×豆桜
冬桜はなんと1年に2度(秋・春)咲く品種です。年によっては紅葉と花見を同時に楽しめることも。
花はやや小さめで、白や薄いピンク色をしています。別名「小葉桜(コバザクラ)」や「四季桜(シキザクラ)」とも呼ばれます。
寒桜(カンザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】淡いピンク色
【開花時期】3月中旬
【交配】寒緋桜×山桜、もしくは寒緋桜×大島桜
寒桜は冬から咲き始める桜として有名で、場所によっては1月~2月に開花します。熱海に多く植えられていることから、別名「熱海桜(アタミザクラ)」とも呼ばれます。
先に紹介した寒緋桜や冬桜と名前が似ているため混同されることも多いですが、まったく別の品種です。
なかなかお目にかかれない!珍しい桜
なんと桜の中にもピンク色ではないものがあるのです!
なお、鬱金桜(ウコンザクラ)と御衣黄(ギョイコウ)はどちらも八重桜の一種です。
鬱金桜(ウコンザクラ)
【花形】八重咲き
【花の色】淡い黄色~黄緑色
【開花時期】4月中旬~下旬
桜の中で唯一、黄色い花を咲かせるのが鬱金桜。ショウガ科のウコンに似た色をしていることから名付けられました。
つぼみはピンク色でほかの桜と変わらないのですが、開花すると薄黄緑に近い色になります。さらに日が経つと中心部から濃いピンク色に変わっていく、色の変化が楽しい桜です。
御衣黄(ギョイコウ)
【花形】八重咲き
【花の色】黄緑色
【開花時期】4月下旬
御衣黄は、新緑の若葉のような淡い緑色をした八重桜です。4月下旬の咲き始め頃は黄緑色をしていますが、満開に近づくにつれてだんだんと黄色になり、花弁の中心にある緑色の線が紅色に変化し、花全体が赤みを帯びていくのが特徴です。
名前にもなっている御衣(ギョイ)とは、貴族の着物の意です。御衣黄の緑色の花びらが、平安時代の貴族、特に若者が好んで着ていた萌黄色(モエギイロ)に近いことから命名されました。
花が散っても嬉しい!あの果物ができる桜
みなさんも大好きな花が散るとサクランボができる桜の品種を2つ紹介します。西洋実桜(セイヨウミザクラ)と支那実桜(シナミザクラ)という品種です。
西洋実桜(セイヨウミザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】白色
【開花時期】4月中旬~5月上旬
西洋実桜はヨーロッパが起源の桜で、1870年頃に日本に持ち込まれたと言われています。サクランボで有名な山形県を中心に北海道や青森県にも分布しており、花が散った6〜7月頃に実を付けます。
サクランボというと桜桃(オウトウ)や佐藤錦(サトニシキ)といった品種が有名ですが、これらはブランド名で、桜の種類としては西洋実桜のことです。
支那実桜(シナミザクラ)
【花形】一重咲き
【花の色】白色~淡いピンク色
【開花時期】3月上旬~3月下旬
支那実桜は中国を起源とする食用の桜で、明治初期に日本へ渡来したと言われています。西洋実桜が比較的北部の寒冷地で生育する一方、支那実桜は温暖な地域でも見られる桜です。
西洋実桜と比較すると実は少し小さめで、開花時期も1カ月以上早いです。別名「唐実桜(カラミザクラ)」とも呼ばれます。
まとめ
今回は日本に自生する野生種の桜から、みなさんにもなじみのある桜、そして見つけたらラッキーな珍しい桜などを紹介しました。
染井吉野以外にも、実にたくさんの種類の桜がありましたね。鬱金桜や御衣黄のように、白やピンク色以外の桜があるのも驚きでした!
種類ごとに違った魅力があるのも、桜が愛され続ける理由のひとつかもしれません。種類や地域によってはもう開花している桜も多くあります。
今年はお花見に出かけたら、ぜひ品種をチェックして、どんな特徴の桜だったか思い出してみてくださいね。
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