フードフォトグラファー兼、企業のInstagram運用を代行するなどフリーランスで活動されている中田里穂さん。コスモス食品のブランドの1つであるNATURE FUTURE FARMのフルモデルチェンジで7月に発売になったORGANIC HERB TEAのヴィジュアル撮影でお世話になりました。
今回は里穂さんにフードフォトグラファーのお仕事についてインタビュー取材をさせていただきました!!
名前:中田 里穂 (https://lit.link/rihojourney)
出身:山梨県出身
星座:やぎ座
大学卒業後、金融機関系の企業へ就職。
その後、数社経験し、2020年「エシカル・コンシェルジュ講座」を受講。食が与える地球環境や動物への影響を知り、プラントベースの食事に切り替えると同時に、Instagram(https://www.instagram.com/rihojourney)にてプラントベースレシピの発信をスタート。現在はフードフォトグラファー兼Instagram運用代行としてフリーで活動。
フードフォトグラファーを職業にしたきっかけ
ナチュラル、エシカル消費に基づくライフスタイルを送り、フードフォトグラファーとして里穂さんが活動をされてから私たちは出会いましたが、ナチュラル、エシカル消費なライフスタイルに興味が湧いたきっかけやフードフォトを投稿し始めたのはいつごろからですか?!
新型コロナウイルスがきっかけでした。
新型コロナウイルスが日本で感染者が出始めたころ、派遣社員として働いていて仕事自体はとても好きでしたが、この先のことをどうしようかなと考えているときでした。好きなことを仕事にして過ごしたいなと思い始めていて、もともと海外旅行が好きだったこともあり、旅行をしながら情報配信をしようかと思っていました。
そうこうしているうちに新型コロナウイルスによるパンデミックが起こり、好きな旅行に行けない、行ってはいけない状況となりました。旅行が唯一の趣味だったので、それができない現実はとても受け入れがたかったです。
旅行に行くことが出来ず、行動に制限がかかりステイホームを余儀なくされたことで時間もあったため、改めてこの先のやりたいことについて考えながら、自己分析を行っていく中で、学生時代からずっと心に引っかかるものがあったことに気がつきました。
それは何かというと、私は、学生時代は貧困問題に関心を持ち、国際政治や経済などを学び、ソーシャルビジネスにも関心を持っていました。心のどこかで学ぶだけでなく、そういった仕事への憧れがあったことに自己分析を行うことで気がつき、これからはそういう仕事もできたら良いなという思いに辿り着きました。
自分なりに調べを進めていく中でエシカル、サスティナビリティという言葉、そしてヴィーガン(Vegan)という言葉にも出会いました。それをきっかけにエシカル・コンシェルジュ講座を受講しました。そこから地球環境が結構大変だということを知り、私にできることは何だろうと考えました。考えた中で食事から動物性のものを減らし、野菜中心にすることが今からでもすぐに実践できる唯一の行動だと思い、食事への意識を強く持ち始めました。
食事への意識を強く持つ中で、昔から食べることはとても好きでしたが、料理をすることはそこまで好きではありませんでした。
ですが、当時住んでいた大阪府ではヴィーガン(Vegan)の料理を提供する飲食店は今よりも少なく、家で作ることでしか実現したい食生活の継続が難しい環境でした。そこから家で料理をつくるようになり、Instagramでの配信も始めました。そこが今の私のスタート地点です。
行動力があって素晴らしいなと思う一方で、急にライフスタイルを一新するのも大変なことがあったのではないかと思います。ライフスタイルは根詰めて変えましたか?!柔軟性を持って変えていきましたか?
最初は割と根詰めていたほうかもしれません。サブスクリプションなどの配信にもある、環境に関する映画なども沢山観ていました。
当時うさぎを飼っていたのですが、うさぎは声がでないこともあり、動物実験に使用されやすいというのを知り、自分の飼っているうさぎがそのような目にあっていたかもしれないと思うと、動物も大切にしたいなと思うようになりました。選択できるものに関しては動物性食品を一切摂取しないと厳格にし、“お肉を摂ることはだめだ”みたいな時期もありました。
厳格から柔軟になったきかっけはどんなことでしたか?!
いくつかきっかけがある中で、一つは夫がお肉料理を大好きなこともあり、人と食事をする際に厳格にしてしまうと一緒に食事を楽しめなくなり、お互いにしあわせじゃないということに気が付きました。
もう一つは、そのころ健康診断を受診していて、その結果が貧血の判定になっていました。その他にも引っかかる項目があったんです。厳格に、そして極端に動物性食品を食べることを無くしてしまったことで、私の身体には合っていませんでした。
そして、動物性食品を控えるとなると豆類でタンパク質を補うことも多くなりますが、豆類が体質に合いませんでした。環境のことを考えるのも大切ですが、体質にあった食事の大切さも知り、魚を取り入れるようにしました。魚を取り入れることで体質にも合い、自分自身の健康も考えるようになったことで現在は何でも食べますが、家では菜食中心、外食時は気兼ねなく好きなものを食べるというところで私の食生活は落ち着きました。
身体は資本ですよね。健康あってこその色々と取り組めることもあると思うので、いま里穂さんが健康でよかったです。
世界観の演出、調理、撮影までマルチタスク
フードフォトグラファーとしての本格的な活動はいつごろからでしょうか?!
食生活に意識を置いてしばらくしてからです。
インプットしたエシカル、サスティナビリティなどのプラントベースに基づく食に対する配信をどんどんしていました。地球環境をより良くしたいという想いで配信をしていましたけど、その投稿をする中で写真をほめていただくことが多かったです。
“写真を褒めていただけることが多い”と配信を続けていく中で自分でも気がついてきたのと同時に、私自身が海外のプラントベース系の配信している方を検索した時に、写真から惹かれることが多かったことにも気がつき、そこから写真に興味を持ち始めました。
日本ではカメラマン(フォトグラファー)は多いと思いますが、フードフォトグラファーはそう多くない印象です。フードフォトグラファーがそう多くないと感じるのは、日本では撮影をする際に、料理を作る人、テーブルコーディネートをする人、撮影する人、と複数人が携わる撮影の段取りが多く、1人が一貫して行うことがほぼありません。
複数名が携わる良さもありますが、そうしてしまうと世界観がどこかで多少ずれることがあるように感じていました。海外だとフードフォトグラファーが全て世界観を決めて調理からテーブルコーディネート、撮影などのディレクションを一貫してやるのが主流です。
私は複数人が携わって撮影する日本の写真にはあまり惹かれなくて、海外のフードフォトグラファーのような、1人が一貫して撮影をしている写真にとても惹かれます。そういった私自身が惹かれる写真を撮影できるように、英語の講座を受講して勉強し、技術を取り入れた配信をしています。そうして行動を続けている中で知り合いからはじまり、お仕事をいただけるようになっていきました。
どんな写真に惹かれているかと考えたことがなかったですが、改めて考えてみると自分の好きが見つかっていいですね☆里穂さんは活動を始めたころ、iPhoneで撮影していたと聞きましたが本当ですか!!!
そうなんです。iPhone、そして最新機種じゃないもので撮影していました。
配信を進めるにつれて、性能が良い最新機種のiPhoneの方が良いなと思い始めて、機種変更をしました。
フードフォトグラファーとして仕事を本格的にするとなったら、iPhoneだけだと権威性みたいなところが少し足りないかなと思い始めたので、しっかりとしたレンズのカメラを買い、カメラでの撮影をはじめました。そのため現在カメラは2年目くらい、レンズもまだまだ勉強中です。
最新機種の性能がなくても多くの人の心に刺さる写真はセンスが光っていたからですね!
現在、一般社団法人 日本フードフォトグラファー協会の正会員ですが、そちらはいつごろ正会員で活動されているのでしょうか!
2023年4月に力試しで応募してみました。応募に至るまでInstagramなどを通して配信はしてきていましたが、実際にプロとして通用するのか分からずでした。たまたまこの応募を見つけたのが申込最終日だったこともあり、とても軽い気持ちで“やってみよ!”と応募しました。(そう思い立ったこれもなにかの運命かなと思いました!)
タイミングばっちりで、導かれていましたね^^
この応募がスキルをあげるきっかけにもなればと思っていました。
ありがたいことに正会員になれましたが、もちろん上には上がいるので、まだまだ技術向上の身です。
私はInstagramのDMやメールなどで個人的にお仕事をいただくことが多いのですが、協会を通しての依頼だとレストランなどの撮影があります。
これまでそう言った撮影のお話をいただいたことはありますが、私が得意としているのは自然光を使用した自宅での撮影なので、自然光を用いて自宅で出来る仕事を積極的に受けています。
例えば、オンラインショップ販売の際の商品撮影など自宅に商品を送っていただき、撮影をすることが多いです。
わくわくを大切にし素材の元の色味を生かすフードフォト
具体的に撮影はどういった流れでしょうか!
依頼を承る→イメージを伺う→イメージとの擦り合わせ作業→イメージの提案→スタイリング→撮影→編集→納品というのが主な流れです。ここに必要があれば調理が入ることもありますし、クライアントの依頼によってはスタイリングなしの物撮りだけも承っています。
オンラインショップでの販売を初めてする方からのご依頼だと、スタイリングありのHP用のイメージ写真3枚、それ以外の商品写真複数枚など、クライアントによってご要望がさまざまなので、臨機応変に対応しています!
臨機応変に対応するのは大変な部分もあると思いますが、依頼する側からすると相談もしやすくてとても嬉しいです。フードフォトを撮影する上でのこだわりや大切にしていることがありましたら、ぜひ教えてください!
撮影した写真をみたときに、まずは自分がわくわくするかどうかを大切にしています。
撮影の部分では、光の入り具合、構成、見え方、位置をとても意識しているのと、自然光での撮影になるので、天気予報のチェックは欠かせません。編集の部分では、素材の元の色味をしっかりと生かすことにこだわっています。
フードフォトの撮影では食べ物を扱っているので、撮影の規模によってさまざまな食材の使用と、量が発生しますが、フードロスの観点も忘れずに食べきるようにしています!甘いものの撮影が続くと、かなり大変です(笑)。
里穂さんがこれまでに撮影してきて、大物といいますか、大変だったフードフォトは何でしたか?!
短時間で形が変形する食べ物などの撮影をするときは、時間との戦いでした。これまで撮影したものだとアイスは時間との勝負。形が1秒ごとに変わるので、シャッターを切るたびに変化するのが楽しい反面、形状の変化があまりにも激しいので大変でした。
構成を整えているうちに、アイスが溶けてしまってドロドロになることもあります(笑)。
あとはガラスのコップ系です。光の反射具合をうまくコントロールするのが難しいなと感じています。
好きと得意が繋がる瞬間
編集で思い出しましたが、里穂さんの作る画像を編集したデジタル資料を数回拝見していますが、資料のデザインがとてもオシャレで見やすくて素敵でした。
大学生の時からパワポで資料を作るのが好きで、とにかくやたらと凝ってしまうんです。
ゼミの海外研修でインドに行った際、観光班の写真係みたいな役回りだったのですが、みんなの写真を沢山撮影し、思い出のスライドを作ったりしていて、アニメーションをつけたり、字体にこだわったり…そういうのが好きなんです。
スライドを作る際、フードフォトにも共通していますが、「世界観をカタチにする」というのが好きなんだなって思います。世界観を形にし、そのなかに私の中のルールを作る(こだわりを持つ)。そういうことが好きなことでもあるし、得意なことでもあると思っています。
いま思い返すと中学生のころからHPを自分で作っていたので、そういったところからも、ものづくりの感覚が生きているし、繋がっているように感じます。
中学生のころから興味があったことが、巡り巡って現在の職に繋がっているんですね!
私の学生時代は、「大学卒業したら大手の会社に入る」というのがいわゆる王道の就職活動で、私もそうでありたいという思いが漠然とありました。
今思えば自己分析が出来ていなかったようにも思います。新卒で金融機関系の企業に入社しましたが、金融関係の仕事にこだわりがあったというよりは、母親が昔から「銀行員が良い」と言っていたことを聞いていたこともあり金融関係の職に就きました(笑)。
金融関係の仕事にしても、今の仕事にしても、ちょっとした私自身のこだわりを持って、仕事をするのが好きです。中学生時代のころからの自分を振り返ると今に結果が繋がってはいますが、現在の職に至るまでは少し遠回りをしました。
撮影日の前日から準備がスタートするマイルーティーン
撮影時のルーティーンはありますか?!
その日の気分ではなく、“今日は撮影の日!”と前々から決めて撮影をしています。天気予報を事前にチェックし、撮影できる日を決め、前日から撮影体制を整えます。撮影日に合わせてモチベーションとやる気の標準を合わせて、スイッチをいれてやる感じです!そして気を張っている感じがあります。
というのも終わった後にすごく疲労を感じるんです(笑)。以前フードフォトのワークショップを開催した時にも、受講いただいた方から言われることがあったのですが、集中しているとシャッターを切るまで息が止まるんです。意識して呼吸しないと身の危険を感じることがあります(笑)。
それだけ1つ1つの作品に力を込めて取り組んでいること、撮影をご依頼する側からすると、そこまでやってくださっていることに嬉しく思います。撮影するものにもよると思いますが、だいたいどれくらいの時間を費やしていますか?!
1カットで食品の形状維持ができるものだと1時間はかからないくらいです。構成などがうまくいかないとき、納得できないときは結構時間がかかります。
ただ、思うように撮影が進まないときでも食材には限りがあるので、その日の1回でやりきる、そしてベストを尽くすことに努めています。食材の準備も新鮮な状態で撮影することを意識しているので、別日に変更や時間が経ってからの取り直しは、特別なことがない限りはしないです。
お天気は晴れていても夏場は日照時間が長いですが、冬場は特に日照時間が短くて太陽の動きもあるので、シャッターを切るたびに少しずつ表情が変わると思います。そう思うと、さきほどの話ではないですが、本当に息している時間もないほど、集中しますよね。
クライアント目線のご依頼料
先日、里穂さんに撮影をご依頼した際に価格設定に驚いたのですが、良心的な価格設定について教えてください!
価格設定について、まだまだ私の中で高みをめざしているので、クライアントが目にした時に満足する値段設定にもしています。Instagram経由で仕事をいただくことが多いこともあり、企業よりも個人の方の方が多いので、価格を押さえたいクライアントさんに対しても視野に入れていただける価格にしています。
●調理&スタイリングあり撮影
・調理
・スタイリング
・撮影
・再編集(提供した写真の再編集/一度のみ)
・小物(こちらで用意のあるもののみ)
●スタイリングあり撮影
・スタイリング
・撮影
・編集
・再編集(提供した写真の再編集/一度のみ)
・小物(こちらで用意のあるもののみ)
●スタイリングなし撮影
・撮影
・編集
・再編集(提供した写真の再編集/一度のみ)
●最低カット数
・6カット~
●その他
・撮影にかかる食材費用や必要小物費用などは、別途御負担いただいております。
・一度撮影したお写真の再撮影は受け付けておりません。
再編集が必要な場合は、カット数分のご料金を頂戴いたします。
・もし人物が入る場合は、別途料金を頂戴しております。
※1人で撮影をしているため対応が難しい場合もございます。基本は「自宅にて自然光」で撮影をしております。
出張撮影はご相談くださいませ。
https://www.instagram.com/rihojourney
フードフォトをきっかけに広がっていく仕事
現在、委託でのInstagramの運用も数企業(ブランド)されていますが、もしよろしければフードフォトグラファーとどう関係しているのかなど教えてください!
プラントベースレシピを自分のInstagramで積極的に発信していましたが、レシピより写真に関心を持っていただく方が多かったことがきっかけかなと思います。その中で綺麗な写真を欲していた食品系の企業との出会いがありました。そこからInstagramの運用のオファーをいただくようになりました。
世の中にはとても素敵なプロダクトの企画や製造をしているメーカーが多いですが、見せ方が上手じゃないと認知に繋がらないなと思っています。私はそういうクライアントさんとの相性が良いように感じていますし、力を発揮できると考えています!
特に食品はさまざまな商品が溢れている中、味見を全て知れば良し悪しがわかりますが、全て味見をして購入することは難しいです。
そうなったときに例えば、家のキッチンにあってテンションがあがるかどうかとか、この商品を使っていることがイケているかどうかなどが選ぶ基準になることも多々あります。その“世界観をつくる”がフードフォトとInstagram運用に共有している部分かもしれません。
付加価値をしっかりと伝える、打ち出す、魅せることが重要だと思いますので、撮影するフードフォトやInstagramの運用の方法を通じて役に立てるようにしています。
選択肢の幅を広げる活動
現在も作品の撮影に留まらず多岐に渡り活動されていますが、フードフォトグラファーの活動を通じてどんなことがしたいなど、今後の目標や夢などはありますか!
フードフォトグラファーの活動しようとしたときに理念を考えてみたんです。
「写真を通じて美味しそうと感じる、その先にしあわせがある」と思います。
美味しそうと思う瞬間ってテンション下がるってことはないはずなので、ポジティブな気持ちに包まれる瞬間だと思っています。そのしあわせを提供することが理想であり、理念です。また、私のフィルターを通じて素敵なプロダクトが世に広まれば嬉しいと思っています。
ある時、フードフォトグラファーの働き方の質問をいただく機会がありました。
その際にもいろいろ考えることがあったのですが、フードフォトグラファーは、女性が取り入れやすい仕事だと実際に仕事をしながら感じています。自宅でスキルを身につけやすく、ライフスタイルに変化が生じるタイミングや子どもがいても、家にいても出来る仕事です。
ディレクションを含めたフードフォトグラファーの仕事をする人が増えれば、その分、女性の選択肢が広がると思っています。働く時間も引き受ける仕事量の調整など、全て自分で決めて出来る仕事なので、私の活動を通じて女性の選択肢の幅を広げたいと思ったことがあったなと、この取材を受けながら思い出しました!
気になることや、お話を聞き進めるなかで深く聞きたいことが増え根掘り葉掘り聞いてしまいました。
何かを始めるとき準備をしっかりして環境を整えてから行動に移される方も多いかと思います。ですが里穂さんのように情勢の変化に柔軟に対応したり、気になったことを調べるインプットと配信でアウトプットする行動力が何よりも大切なんだなとインタビューさせていただき改めて思いました。撮影道具もiPhoneから始まったなんて、誰にでもチャンスがあるんだなと選択肢が本当に広がります。この度はインタビューにご対応いただき、貴重なお話をありがとうございました^^
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