突然ですがみなさんは、タイ料理はお好きですか?私はスパイスの効いたタイ料理が大好きです!ここ数年、街中にもタイ料理レストランがよく見られるようになりましたよね。
ところで、タイ料理って種類がとても豊富ではありませんか?また、トムヤムクンやグリーンカレーなど、どうしても「辛い」イメージが先行してしまい、辛いものが苦手な方は躊躇してしまうこともあるでしょう。でも実は、そんなことないんです。
この記事では、非常に奥深いタイ料理のあれこれを紐解いていきます。辛いものがお好きな方もそうでない方も、あなたにぴったりのタイ料理を見つけるコツがわかりますよ。ぜひ最後までお付き合いください。
目次
タイについて軽くおさらい
タイ料理をよりよく理解するために、まずはタイについて知るところから始めましょう。
タイはミャンマーやラオス、カンボジア、そしてマレーシアと国境を接しており、インドシナ半島の中心に位置するアジアの国の1つです。大きさは日本より少し大きいくらいで、おおよそ7,000万人が暮らしています。
私たちがよく使う「タイ」はいわゆる通称で、「タイ王国」が正しいです。
多民族国家×気候がタイ料理の特徴を紐解くカギ?
複数の国に隣接しているという地理的背景から、タイにはそれぞれの文化や言語をもった様々な民族が暮らしています。
・タイ族(大多数):約85%
・華人系:約10%
・その他:マレー系、カンボジア系、インド系
そんなタイはやはり暑いイメージがありますよね。タイは熱帯性気候で、
暑季(3~5 月)、雨季(6~10 月)、涼季(11~2 月)の3 シーズンに分けることができます。年間平均気温は 29℃程度。首都バンコクでは、一番暑いとされる 4 月の平均気温は 30〜35℃にもなり、最も気温が低い 1 月でも 20℃を超えるなど、1 年を通じて蒸し暑いのが特徴です。
こうした様々な文化を持った人達が暮らしていることや、気温・湿度が年間を通して比較的高いという特徴が、タイ料理の特徴にも影響していると言えます。
中国、インド、マレーシアなどの食文化が融合するとともに、暑い日でもさっぱりと食べられるように酸味を加えたり、食欲の落ちる時期をうまく乗り切るためにスパイスを効かせた料理が多いのでしょう。
タイ料理の歴史
タイは「インドシナ半島の中央に位置する」、と先ほどご説明しました。インドシナは”Indochina”と綴ることからもわかるように、「インド」と「中国」のことを指しています。故にタイ料理は、中華料理とインド料理両方の影響を受けた食文化であると言えます。揚げる、炒める、蒸す、といった調理方法は中国から来た料理法です。一方で、スパイスをふんだんに使うカレーなどの料理はインドからやって来ました。
「タイ料理=辛い」は間違い?
ということは、中国由来の料理とインド由来の料理がタイ料理には多く存在するということですね。つまり、辛くないタイ料理ももちろんあります!
辛いタイ料理の代表格はインド由来の料理です。辛いものが苦手な方は、中華料理から来ている料理を選べば辛くないものがたくさんあるのでご安心ください。
たとえばパッタイ(タイ風焼きそば)、カオパット(チャーハン)、カオマンガイ(鷄飯)、ラートナー(あんかけ麺)、カオムーデーン(タイ風焼豚乗せご飯)など、豊富にありますよ。
地域ごとのタイ料理の特徴
日本でも北は北海道、南は沖縄と、地域によって全く異なる郷土料理が存在しますよね。それはタイでも同様です。
北部から南部にかけ、地域によって異なった特徴を持つ料理が数多く見られます。
タイの国土は南北に細長く、北西部~西部にかけてはミャンマー、東北~北部はラオス、東南部はカンボジア、南部はマレーシアに接しています。
北部は山地が広がり、南部は豊かな海に囲まれています。料理もその地域の気候や取れる食材、文化などに大きく影響を受けています。
タイ料理の特徴は、主に4つの地域によって分類できます。北部では、脂が多めながらもマイルドで、辛さは控えめ。
一方で東北部は辛味と塩味がきいた濃い目の味付けが特徴です。タイ東北部を「イサーン」と呼ぶことから、この地域の料理は「イサーン料理」と呼ばれます。
南部は海に囲まれていることから、魚介類が豊富。生臭さを消すために、ターメリックなどのスパイスを使った黄色く、辛い料理が多いのが特徴です。
中央部は北~南の料理の集合体であり、かつ外国の影響を受けた食文化が発達しています。
では、それぞれの地域ごとに深堀りしてみていきましょう。
北部
<代表的な都市>
チェンマイ・スコータイ・チェンライなど
・隣接するミャンマー国の食文化に影響された料理が多い
・タイ料理の中では一番味付けがマイルド
・辛さも控えめで、日本人の好みに合う料理が多い
・山に囲まれた地域のため、豊富な水源を利用した米の栽培も盛ん
<代表的な料理>
・カオソーイ(ココナッツカレーラーメン)
・サイウア(ハーブソーセージ)
・ナムプリック(ディップ)
・ゲーンハンレー(ココナッツミルクを使用しないタイ北部のカレー)
東北部
<代表的な都市>
コンケーン・ウドーンターニー・ノンカーイ・ナコーンラチャシーマー・ウボンラーチャターニーなど
・隣接するラオスやカンボジアの食文化に影響された料理が多い
・味付けの特徴は「激辛」と「濃い目の味付け」
・カオニャオ(もち米)が主食
・味付けの濃いおかずを、カオニャオと生野菜、茹で野菜と共に食べるのが主流
<代表的な料理>
・ソムタム(青パパイヤのサラダ)
・ガイヤーン(鶏の炭火焼き)
・サイクロー(豚肉を発酵させた酸っぱいソーセージ)
・ラープ・ムー(豚のハーブ炒め)
・トムセープ・グラドゥックオン(骨付き豚肉入りのスパイシースープ)
中部
<代表的な都市>バンコク・アユタヤなど
・バラエティに富んだ味わいが特徴で、①甘さ ②酸っぱさ ③しょっぱさ ④辛さ のすべてが混ざり合う
・アユタヤ王朝以降、都が置かれてきた歴史的経緯から、外国の食文化の影響を受けているものが多い
<代表的な料理>
・パッタイ (米粉でできた太麺を使ったタイ風焼きそば)
・タイスキ(タイ風すき焼き)
・グリーンカレー
・トムヤムクン(辛酸っぱい海老のスープ)
・空芯菜炒め
南部
<代表的な都市>
プーケット
・味のポイントは①辛味 ②酸味 ③甘味(主にココナッツミルクの甘さを使う)
・隣接するマレーシアの食文化に影響された料理が多い。イスラム教を信仰する人たちは豚肉や酒をはじめ、食べてはいけない食材が多く、基本的には鶏肉や魚を好んで食べる
・海が近く魚介類が豊富に手に入るため、魚介類を用いた料理が多い
・ターメリックをふんだんに用いるため、黄色い料理が多い
<代表的な料理>
・マッサマンカレー
・カオヤム(発酵させた海魚を使ったサラダご飯)
・パッサトーガピクン(サトー豆のガピ海老炒め)
※ガピ…南タイ料理に欠かせない、海老味噌発酵調味料
・カオモックガイ(ターメリックライスに柔らかいチキンを乗せた料理)
タイ料理と言えばハーブやスパイス。どうしてこんなにハーブやスパイスを使うの?
タイ料理の魅力は、何と言ってもハーブやスパイスの効いた複雑かつ奥深い味わいでしょう。ですがなぜタイ料理では、このようにたくさんの香辛料が使われるのでしょうか?
前述したように、食欲促進の目的や、ハーブやスパイスの持つ殺菌作用ももちろん理由の一つです。ですがそのルーツはもっとシンプル。食していた肉などがあまりおいしくなかったが故なのです。
昔は、今のようにいつでもどこでも新鮮な食肉が手に入るわけではありませんでした。働けなくなった年老いた家畜を食肉にしていました。
こうした家畜の肉は臭いもきつく、硬い肉質なので、臭みを和らげるためにハーブやスパイスを使って長時間煮込んでから食べていたのです。1年を通して気温が高いタイでは、数多くのハーブが自生していますし、インドからの流入によりスパイスも豊富でした。
現代ではこのような肉を使う必要はなくなりましたが、貴重な食材をおいしくいただこうとする先人たちの知恵だったのでしょう。
タイ料理レストランや屋台に「必ず」ある4つの調味料
タイ料理を食べに行くと、テーブルの隅になんだか辛そうな調味料があるのを目にしたことはありませんか?これは「クルワン・プルン」と呼ばれる調味料セット。タイでは「辛味」「甘味」「酸味」「塩味」の4つを使い、自分好みの味にカスタマイズしてはじめて料理ができあがります。そのため必ずと言っていいほど、どこのお店でもこれらの調味料が置かれています。
①辛味:プリック・ポン(粉唐辛子)
辛い唐辛子「プリッ・キーヌー」を乾燥させたものが入っている
②甘味:ナムターン(グラニュー糖)
辛味を和らげたいときに
③酸味:プリック・ナムソム(唐辛子入り酢)
酸味を加えてさっぱりいただきたいときに。たいていは辛くない唐辛子「プリック・チーファー」の輪切りが入っている
④塩味:ナンプラー(魚醤)
塩辛さをプラスしたいときに。プリッ・キーヌーの輪切りが入っていることもある
タイ料理でよく使われる調味料・ハーブ・スパイス
ナンプラー(魚醤)
カタクチイワシなどの小魚を塩漬けにし発酵・熟成させて作った、魚醤(うおしょう)のこと。生臭さや塩辛さなどが特徴で、タイでは塩味を足すために用いる。
オイスターソース
タイでは生牡蠣の養殖も盛んで、主に炒め物にオイスターソースがよく使われる。日本のものと異なり、タイのオイスターソースは甘みとコクが強い。
チリペースト
タイの家庭料理には欠かせない万能調味料。干しエビ・にんにく・玉ねぎ・唐辛子を砂糖と油で炒めたものが瓶詰めになっている。
ココナッツミルク
スイーツはもちろん料理にも幅広く使われる、タイ料理には欠かせない存在。特に南部では甘味として砂糖よりココナッツミルクで甘みを足すことが多い。
唐辛子
タイには10種類以上もの唐辛子があり、サイズが小さいほど辛味が増していく。中でも一番辛い唐辛子は「プリッ・キーヌー」と呼ばれている。
バイマックルー
こぶみかんの葉。爽やかな香りが付くため、魚介の臭み消しとして重宝される。トムヤムクンをはじめ、海鮮系のスープ料理には必ず使われる食材。
レモングラス
レモンのような爽やかな香りが特徴の、細長いイネ科の植物。バイマックルー同様、煮込み料理によく使われるほか、炒め物に入っていることも多い。
まとめ
一口に「タイ料理」と言っても北〜中部、南と、地域によって実に様々でしたね。「辛そう」という理由でこれまで嫌煙していた方も、少し入口が広がったのではないでしょうか。
食文化というものは地理的特徴のほか、外交や戦争などの歴史的背景が影響することも多いです。これらを踏まえたうえでタイ料理を食べに行くと、きっと一段と食事の場が楽しいものになるはずです。知れば知るほど奥が深いタイ料理。私も今度はイサーン料理にチャレンジしてみたいと思います!
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