美しい海に住む魚やサンゴたち。シュノーケリングやダイビングでみる海の世界は、とってもステキですよね。
しかし、そんな海を壊してしまう恐れがあるといわれているのが、私たち人間の使っている日焼け止め。実は今、世界中でこの日焼け止めを見直そうという動きが広まっているのです。
そこで今回は、日焼け止めが海に与える影響についてご紹介していきます。
ちょっとした知識があるだけで、日焼け止めの選び方が変わってくるかもしれません。
目次
日焼け止めが海に与える影響とは
紫外線から肌を守るために欠かせない日焼け止め。とくに海ではたっぷりと日焼け止めを塗る方も多いですよね。私たちが使っているこの日焼け止めが、実は海に悪影響を与えているかもしれないのです。
サンゴの死滅
あたたかくて透明度の高い海にだけ生息するサンゴ。日本でも沖縄や高知などの海で美しいサンゴを見ることができますよね。
植物のようにもみえるサンゴですが、イソギンチャクやクラゲなどと同じ「刺胞動物(しほうどうぶつ)」という立派な動物。海が汚れたり海の温度が高すぎたりすると、サンゴは真っ白になり、やがて死んでしまうのです。
日焼け止めに含まれている成分も、サンゴの成長を妨げる要因のひとつ。「海は広いからちょっとくらい大丈夫」と思うかもしれませんが、実際には海全体に広がるわけではなく、日焼け止めが流れ出た周辺にそのまま溜まってしまうのです。
ある調査では、年間に14,000トンもの日焼け止めが海に流れ出ていることがわかっています。1人が使う日焼け止めの量は少なくても、たくさんの人が同じように使った結果が、このような事態に繋がってしまうのですね。
海の生き物たちへの悪影響
日焼け止めの成分は、サンゴだけでなくイルカや魚、貝など他の海の生物たちにも悪影響があるという研究結果が続々と発表されています。2019年には「海に住む魚の体内に、人間が使う医薬品や日焼け止めの成分が蓄積されていた」ということがわかり、海外でも大きな話題となりました。
日焼け止めに使われる特定の成分は、魚の代謝を妨げ、脳や肝臓にも悪い影響をあたえるのです。まだ分かっていないことも多いですが、食物連鎖によって他の魚や私たち人間へと影響が広がる可能性もあるといわれています。
また、サンゴが真っ白になる「白化現象」が進むことでサンゴが死滅し、サンゴ礁に生息する生き物たちが住む場所を失ってしまうという問題もあります。当たり前のように使っている日焼け止めですが、実は海にとっては大きなダメージとなっていたのですね。
肌へのダメージ
過度な日焼けが肌に悪いというのは事実。肌がダメージを受けて、シミやそばかすの原因となります。
しかし紫外線を恐れるあまりに、強すぎる日焼け止めを使ったり、しっかりと落とさなかったりすることも、肌へのダメージへとつながるのです。パッケージに書かれている「SPF」と「PA」の数字が高ければ高いほど防御効果はありますが、肌への刺激も強くなります。
大事なのは、いつもたっぷりの日焼け止めを塗ることではなく、使い方に気をつけること。海やプールなどアウトドアのときだけ強い日焼け止めを使う、肌に優しい日焼け止めを使う、しっかりとクレンジングで落として保湿をするなど、肌ケアにも気を使ってみてくださいね。
日焼け止めの成分
日焼け止めを買うときに成分までチェックして買う人は少ないかもしれません。でも、もし海のことをちょっとでも考えて日焼け止めを買うのであれば、ぜひ覚えておいてほしいお話です。
「紫外線吸収剤」とは
日焼け止めには大きくわけて2つのタイプがあります。ひとつは紫外線を熱や赤外線などのエネルギーに変換して反射する「紫外線吸収剤」、もうひとつは紫外線をそのまま跳ね返す「紫外線散乱剤」です。
2つのうち、サンゴや海の生き物に悪い影響があるといわれているのは「紫外線吸収剤」。紫外線を一度吸収して他のエネルギーに変えて放出することで、私たちの肌を守ってくれています。
しかし、紫外線吸収剤に含まれるいくつかの成分は「最も注意するべき化学物質」とされ、すでにいくつかの国では販売や使用が禁止されているのです。
・オキシベンゾン
・オクチノキサート
・エンザカメン
・オクトクリレン
中でもこの4つの成分はとくに注意が必要。日焼け止めの成分は表示が義務付けられているので、買うときにはチェックしてみましょう。「紫外線吸収剤」は塗っても白く浮かないため、知らないうちに選んでいることも。自分のためにも海のためにも、しっかりと知識をもって選んでくださいね。
「紫外線散乱剤」を選ぼう
海に優しい日焼け止めといわれているのが「紫外線散乱剤」。原材料である「酸化チタン」や「酸化亜鉛」は天然の鉱物なので、海への影響も少ないのです。
紫外線散乱剤の日焼け止めは、科学物質を含まないため「ノンケミカル」と表示されていることも。また、海外の日焼け止めは「Reef Safe」「Eco Friendly」の表示が目印になります。
海で使う日焼け止めだけでも、環境に優しい選択ができるといいのではないでしょうか。
世界の日焼け止めルール
日焼け止めが海に与える影響を改善しようと、すでに動いている国や地域もあります。現地の人だけでなく、私たち観光客が日焼け止めへの意識をもつことが大切ですね。
ハワイ
ハワイでは2021年1月より、有害な化学物質を含む日焼け止めの販売と流通が禁止されています。サンゴや海の生物たちを守るため、きれいな海を保つための法律です。
禁止されている成分は、先ほど紹介した「オキシベンゾン」「オクチノキサート」の2つ。アメリカでこのような法律が制定されるのは初めてのことです。ある研究では、ハワイ島のサンゴのうち56%が日焼け止めなどの影響により死滅していることがわかっています。
観光客が日焼け止めを持ち込むことはOKとなっていますが、ビーチでは無料の日焼け止めが配られていることもあるそう。ハワイの海を守るために、私たちもできることから取り組んでいきたいですね。
パラオ
日本から南に約3,000km、飛行機で5時間ほどで行ける島国パラオ。大小約200の島からできていて、世界遺産にも登録されている美しい島国です。
パラオで日焼け止めの法律が施行されたのは、ハワイよりも前の2020年1月から。世界の中でももっとも厳格な条例となっていて、対象となる禁止成分は10種類、販売した場合は罰金が課せられます。
さらに観光客などが海外から持ち込んだ場合は没収となります。世界的なダイビングスポットともなっている国だからこそできた美しい海を守るための法律。パラオに行く際は必ずチェックしてから行ってくださいね。
フロリダ州キーウエスト
アメリカのフロリダ州の最南端に位置するキーウエスト。美しい海の上には約10kmもの橋「セブンマイル・ブリッジ」があり、観光客にも人気の街です。
キーウエストも2021年1月より、「オキシベンゾン」「オクチノキサート」を含む日焼け止めの販売が禁止となっています。サンゴを守ると同時に、「サンゴや海に優しい行動」を呼びかけるきっかけにもなりますよね。一人でも多くの人がまずこの問題を知ることが大切なのではないでしょうか。
カリブ海・ボネール島
カリブ海にある美しいサンゴが魅力のボネール島。ダイビングやシュノーケリングのスポットとしても有名で、毎年たくさんの観光客が訪れています。
そんなボネール島でも、2021年1月より日焼け止めの規制が始まりました。ハワイの法案にならい、「オキシベンゾン」「オクチノキサート」を含む日焼け止めの販売を禁止しています。ある研究では、1980年以降カリブ海のサンゴ礁の約90%が姿を消したとの報告も。
規制がある・なしに関わらず、海で使う日焼け止めをもう一度見直してみてはいかがでしょうか。
海に優しい日焼け止め
日焼け止めの成分に注目してみると違いがわかってきますよね。ここでは海に優しい日焼け止めを3つご紹介します。この夏どの日焼け止めを買おうか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
ビーチフレンドリー処方の日焼け止め「アリィー」
「日焼け止めを使いながら美しく楽しく過ごしてほしい」という思いを込めて、カネボウ化粧品のブランド「アリィー(ALLIE)」が発売した「ビーチフレンドリー処方」の日焼け止めが話題となっています。
アリィーは、世界の国やビーチで特定の成分が含まれる日焼け止めの使用が禁止されていることを受け、海のルールに配慮した「ビーチフレンドリー処方」を新しく採用したのです。日焼け止めの成分はもちろん、パッケージも環境に優しいものを使っています。
さらに汗や水にも強いウォータープルーフとなっているそう。紫外線が強くなるこれからの季節、海に優しい日焼け止めを使ってみるのもいいかもしれませんね。
海への思いが込められた「サンゴに優しい日焼け止め」
沖縄出身の金城さんが作ったサンゴを守るための日焼け止め。セサミオイルやココナッツオイルなどのナチュラル成分で作られていて、紫外線吸収剤や香料は一切使っていません。
あるとき、市販の日焼け止めを塗って海に入ろうとした金城さんにかけられたダイバーからの一言「サンゴ、死んじゃうよ」。その日から、日焼け止めとサンゴの関係についてたくさん勉強した金城さんは、海に優しい日焼け止めの開発を決めたそうです。
100%天然成分なので、肌の弱い方や赤ちゃんへの使用もおすすめ。SPF50+、PA★★★★となっていて、日焼け止めとしての効果も十分です。
海外ではだんだんと浸透してきている海に優しい日焼け止めですが、日本ではまだ少ないのが現実。手にする度に「海への配慮」をちょっとでも思い出して欲しいという金城さんの想いがこもった「サンゴに優しい日焼け止め」です。
「サンスクリーンバターSPF50+」
アメリカ・カリフォルニア発のオーガニックブランド「ALL good」から発売されている海に優しい日焼け止め。自然と調和した生活を送ってほしいという思いから、オーガニックのハーブなどを使ったボディケア製品を販売しています。
「紫外線吸収剤フリー」「グルテンフリー」「リーフフレンドリー」など、とにかく自然と肌に優しい日焼け止めとなっています。自社有機農場で栽培したオーガニック原料をベースに作られているので、安心して使うことができますよね。
日焼け止めはバタータイプの他に、ローションタイプとスティックタイプもあるそう。先ほど紹介した日焼け止め規制のある海外のビーチでも使えるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
まとめ
美しい海を壊すのも守るのも私たち人間。できることなら後者を選びたいものですよね。
ほんの小さな積み重ねで、美しい海は良くも悪くもなるはず。
サンゴや海の生物たちを守るため、できることから始めていきましょう。
Commentsコメント