日に日に暑さが和らぎ、秋めいてきましたね。この時期から冬にかけて心配なのが、風邪やインフルエンザといった感染症。コロナもまだまだ猛威を奮う中、「免疫力」を高めたいとお思いの方もいらっしゃるでしょう。
「ヨーグルトや乳酸菌飲料などの発酵食品が免疫力を高めるらしい」
「善玉菌は身体にとって良いもの、悪玉菌は悪いもの」
と「なんとなく」理解している方も多いのでは?
今回は腸と免疫力の関係についてわかりやすく説明します。「なんとなく」ではなく「きちんとした」理解を得られるはずですよ。
まずは「免疫」についておさらい
免疫とは「疫(えき)から免れる(まぬがれる)」つまり感染症などにかからないようにすることを指します。
たとえば一度「はしか」などの伝染病にかかると、ほとんどの人は同じ伝染病にかからなくなったり、かかっても症状が軽くなったりしますよね。これを「免疫ができた」と言います。
免疫システムは、体内に侵入した抗原(細菌やウイルスなど)を異物として攻撃します。自分の身体を正常に保つという大切な働きを担ってくれているのです。
免疫機能の中核を担う腸
私たちは口から食べ物を取り入れ、それらは胃や腸を通り、肛門から便となって排出されます。でも、口からは食べ物以外にもさまざまな細菌やウイルスが侵入してきますよね。これらの外敵にさらされる機会が多いため、腸には免疫機能が備わっています。
腸管免疫(ちょうかんめんえき)の働き
腸は消化・吸収する器官であると同時に免疫器官でもあり、腸管(腸)の免疫機能を「腸管免疫」と呼びます。
細菌やウイルスの多くは胃酸によって死滅しますが、それでも死なない病原菌などはそのまま⼩腸まで到達してしまいます。すると腸壁にある「パイエル板」に取り込まれます。
このパイエル板の中には監視役の「M細胞」が住んでいて、侵⼊してきたものが「人体にとって有害」と判断した場合、司令塔である「ヘルパーT細胞」を通じて「B細胞」が抗体を生成・やっつけてくれます。
【抗原の駆除の過程】
1.バイエル版に住むM細胞が細菌やウィルスなどを発見
2.ヘルパーT細胞に情報が伝達され、駆除屋さんのB細胞に抗体生成を依頼
3.B細胞によって作られた抗体が攻撃を開始
4.抗原死滅
ですが摂取したものが食べ物など無害なものの場合は、免疫反応は起こらないようにしてくれないと困りますよね。これを「経口免疫寛容」と言います。この場合、前述の2の過程で「制御性T細胞」と呼ばれる制御屋さんがB細胞に働きかけ、抗体を作らないよう助言してくれます。
抗体は、抗原に対抗するために必要なもの。しかし、過剰に生産されるとアレルギー症状や自己免疫疾患などの病気の要因になってしまうため、制御性T細胞の存在は非常に重要なのです。
少々難しい仕組みですが、以下の記事でイラスト付きで詳しく説明されています。
出典:やさしいLPS 「免疫と腸の関係とは?腸内での免疫の働きや腸内環境を整える食事について」
免疫細胞の6~7割は腸に存在する
免疫細胞は骨髄の中で生まれ、血液やリンパ液を通って全身を巡っています。その免疫細胞の約60〜70%は腸に存在しているのです。
ヒトの体は約40兆個もの細胞からできているのですが、腸内細菌の数はそれよりも多く、なんと数百種類以上。個数は100兆個にも上るんだとか!
この腸内細菌は前述の腸管免疫をサポートしてくれる大切な存在です。
腸内細菌の黄金比=2:7:1
腸が健康な状態とはすなわち、腸内細菌のバランスが整っているということ。
腸には善玉菌・悪玉菌・日和見菌(善玉でも悪玉でもない菌)という、3種類の腸内細菌が存在します。善玉菌:2割、悪玉菌:1割、日和見菌:7割という割合が黄金比と言われています。
悪玉菌の存在も実は重要で、免疫細胞のトレーニング相⼿になる役割を担っています。悪玉というと身体に害のあるものと捉えられがちですが、⼈体にとって有害で攻撃すべき敵の特徴を学習するためにも必要不可欠な要素なのです。
しかしながら悪玉菌は簡単に増えてしまう一方で、善玉菌の割合を保つのは大変。腸管免疫の働きを低下させないためにも、善玉菌を増やし腸内環境を整えることが大切です。
腸内環境を整えるためには
ポイント1:発酵食品を食べる
発酵食品には乳酸菌やビフィズス菌が豊富。乳酸菌は善玉菌を増やす効果があります。たとえ胃酸で死滅してしまっても、これらの死骸は善玉菌のエサになってくれます。(素晴らしいですね!)毎日の食事に積極的に取り入れたいですね。代表的なのは納豆やヨーグルト・チーズ・キムチなど。その他、漬物や甘酒・味噌なども発酵食品です。
これらは一度にたくさん食べたからといって、すぐに腸内環境が整うわけではありません。同様に、たまに食べるだけというのも効果はありません。継続して食生活に取り入れるように心がけましょう。
ポイント2:食物繊維を摂る
食物繊維も同様に、善玉菌のエサになります。
食物繊維には水に溶ける水溶性食物繊維と、水に溶けない不溶性食物繊維があります。善玉菌を増やすには、水溶性食物繊維がおすすめ。代表的な食品には、ごぼうや人参・ブロッコリー、豆類やイモ類、そして海藻・キノコ類などが挙げられます。
また、食物繊維には大腸を刺激して便通を促す役割もあります。それでいて低カロリーなので、積極的に取り入れましょう。
ポイント3:脂質やたんぱく質の摂りすぎに注意
腸内環境には悪玉菌も必要だと説明しましたが、増えすぎてしまっては本末転倒です。悪玉菌は高たんぱく質・高脂質が大好物。肉料理や脂質の多い食事ばかりをしていると、どんどん悪玉菌が増えてしまいます。
とはいえたんぱく質自体は身体に必要不可欠な栄養素。無理に減らすのはおすすめしません。肉料理に偏らないように、魚や大豆製品を積極的に選ぶと良いでしょう。
ポイント4:自律神経を整える
腸は脳に次ぐ多くの神経細胞が存在しているため、別名「第二の脳」とも呼ばれています。腸の不調は脳に、そして脳が受けたストレスは腸に反映されるのです。ストレスや緊張でお腹が痛くなった経験はありませんか?
ストレスや不規則な生活は自律神経の乱れの元。現代人は寝る直前までスマホを見ていたり、夜遅くまで明るい環境下にいたりすることが多いため、交感神経から副交感神経への切り替えがうまくできていない人が多いようです。腸が活発になるのは副交感神経が優位のとき。食生活に加え、十分な質の高い睡眠や適度な運動が自律神経を整えるためには大切です。
自律神経を意識した生活を送れば、おのずと腸内環境も整えることができると言えそうですね。
コラム スープで手軽に腸活のススメ
腸内環境を整えることが免疫力UPのカギとなることがおわかりいただけたと思います。腸内環境を整えて健康な生活を手に入れる、いわゆる「腸活」には、継続することが何よりも大切。
こちらの記事では、簡単に作れる腸活スープをご紹介しています。味のレパートリーも豊富に用意しましたので、毎日の腸活レシピにぜひお役立てください。
まとめ~腸内環境を整えて免疫力を高めよう!~
腸と免疫力の関係について、ご理解は深まりましたか?
特に難しいことを実践する必要はありません。腸内環境を整えるよう意識すると、自然と早寝早起きや整った食事など、規則正しい生活を送れるようになってきます。規則正しい生活が送れていると、人は前向きに・かつ活動的に行動することができるようになります。朝早く起きた分、「散歩にでも出かけてみようかな」「運動をしてみようかな」といった気持ちにも変わっていくでしょう。こうした習慣がまた、腸内環境を整えることにつながるのです。
食事の面では先程ご紹介した腸活スープなども参考にしながら、ぜひ無理のないペースで腸活を継続していただけたら幸いです。 継続は力なり!
Commentsコメント